演奏者の想い〜音楽葬でのエピソード〜

葬儀で演奏させていただくことは、演奏者にとってかけがえのない経験です。
葬楽社の演奏家に、音楽葬への想いや意義、そしてこれからの事をインタビューしました。

ご依頼の経緯

どのような経緯で音楽葬をやることに?

「自分のお葬式では、トランペットの演奏を入れて欲しい」という故人のご意向があり、ご家族で相談してお葬式に音楽を入れることにしたそうです。式次第の後半に『献奏』を取り入れた形でした。

演奏曲や編成、音量について

どんな曲を演奏しましたか?

故人がイタリア映画の配給のお仕事をされていたとのことで、イタリア映画の名作『道』より「ジェルソミーナ」、そして同じく名作『ひまわり』のテーマ曲を演奏しました。

ジェルソミーナ

ニーノ・ロータ作曲。劇中でのトランペットの哀愁漂う演奏が話題になりました。

ひまわり

「ティファニーで朝食を」や「ピンクパンサー」などで有名なヘンリー・マンシーニが作曲し、公開当時には主題曲も日本で大ヒットだったそうです。ジャズのスタンダードナンバーとしても知られています。

どんな編成でしたか?

トランペットとギターのデュオで演奏しました。
いつも一緒に演奏していて、想いもある奏者と演奏できたので、気持ちも伝わりやすかったかと思います。

音量は心配されませんでしたか?

音量のことは何もおっしゃっていませんでしたね。
トランペットは大きい音のイメージが強いようですが、実は小さく奏でることも得意とする楽器なんです。
「ミュート」という器具を使うことで、こもったような味のある音を出すこともできます。
ですから、演奏した後に「トランペットってもっとうるさい楽器かと思ってました!」なんて言われることもよくあります(笑)

葬儀における音楽の持つ効果

お葬式で演奏することの意義について教えてください

「音楽がその空間にある」ということが、故人のことを思い出すきっかけになるのではないでしょうか。
仮に、故人とその音楽との関わりについて丁寧な説明がなかったとしても、言葉以上に思い出に寄り添えるとも感じます。

一瞬にして「この音楽はそういうことなんだな」と音だけで気持ちを一つにできるツールだと思っています。
お葬式だけではなく、冠婚葬祭や様々な節目の時には、世界中どこでも音楽がある。このことが、音楽の持つ効果を物語っているのではないでしょうかね。

涙が出るということはそれだけ想いがあったということ。
泣かせるために演奏しに行ったわけではないですが、「思う存分故人を偲んでください」という想いで演奏させていただきました。

音楽葬のこれから

今後の葬儀についてどう考えますか?

世の中の状況や家族のあり方が様々に変化する中で、お葬式は簡素なものにならざるを得ないのかもしれません。
ですが、葬儀の形式は様々でありながらも、故人への想いや故人と関係があった方々へのおもてなしの気持ちを、音楽はわかりやすく表現できると思います。
実際にお葬式での演奏を経験させていただいて、音楽はお葬式の世界観を一つに包んでくれると、改めて感じました。

お葬式は、故人と最後に寄り添える瞬間ですから、お葬式そのものが彩られていたら、より故人との思い出に浸れるのではないでしょうか。
音楽がその彩りとなれば嬉しいですし、そうであると確信しています。